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海鳴り
愛する者の名前を呼び続けるかのような海鳴り
波の音に疼く身体を持て余してる
塩の香りが喉を傷め岩に砕ける波しぶきに裸の魂が震えてる
君が愛したこの世界はこんなにも厳しく
波打つ碧い砂漠が渦を巻いて全てを呑み込んだ
溺れる者の呼吸を底に沈めて光を閉ざす
座られることもないまま佇む椅子が
砂に埋もれて喘いでいるその息が途絶えるのも待たず黒い馬が走り去ってゆく
君がいないこの世界はそれでも美しく
全てを喪った時恐れるものは何もないと言う
それでも遺された痛みを忘れることだけは恐れてる
光に向かって翔てゆく黒い馬は 命を集めて死ぬまで走り続ける
君を忘れたこの世界で何が聞こえるだろう
何を歌うだろう
愛する者の名前を呼び続けるかのような海鳴り
全ては残酷に輝く、気が狂いそうなほど美しく
愛する者の名前を歌い叫び轟く海鳴り
全てを喪ってさえもこの悼みこそが生きる希望なのだと
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